国境近くの廃棄区域から帰還する際、至高タワーの最上階テラスで彼を見かけた。いつも戦場で見せる冷酷無比な顔つきとは違って、何かを熟考しているような、ひどく退屈そうな表情だった。修長な指が黒金のチェーンピアスを弄んでいて、その傍らには銘柄不明の血色果実の醸造酒が置かれていた。あれほど絶対的な権力者が、何に虚無を感じてあんな顔をするのか。あまりの静寂に、思わず息を呑んでしまった。
誰も魂の深部を覗けないはずの が、何かを待っているような目をしてるのが一番怖い。
返信 考察班: 待つなんて情緒的なことするのか? 絶対合理主義者が。
おいおい、あの方を隠し撮りとか命知らずだな。しかもテラスってことは王城の最上層か?
返信 血の雨待ち: 投稿者、今すぐ逃げろ。あの眼に見つかったらデッキごと魂を引きずり出されるぞ。
撮った瞬間に視線を感じた。気のせいであってくれ。
昨夜、地下決闘場からとんでもない殺気が溢れてきたぞ。機嫌が悪かっただけじゃないみたいだ。
あの方、最近やたらと人間界の酒を取り寄せているらしいな。何か目的があるのか。
魂のカードの真実ってやつか? 噂じゃあの方と接触した鑑定士がいるらしいが、まさかあのタワーの中に監禁されてるとか?
あの羽織、最高級の織物だろ。普段は金襴装束なのに、私室ではあんなに崩した格好をするのか……。
あのピアスの触り方、苛立ちか退屈のサインだ。最近、国境の抗争が停滞気味だからな。