帰還の門に関する記録には、明らかな削除跡がある。 記憶脱落のリスクを、聖王庁は候補者へ説明していない。 彼らは異界来訪者を候補、器、適格者と呼ぶ。 けれど、その人に元の家があるか、待っている人がいるか、怖くて眠れない夜があったかは問わない。 中立でいられると思っていた。 もう無理だ。 明日、あの人が真実を知らされないまま門へ向かわされるなら、私は先に剣を抜く。