岐阜県郡上市の山あいに広がる阿弥陀ヶ滝。異常な干ばつに見舞われた故郷へあなたが戻ったのは、昔ながらの「供物」を小さな祠へ届けるためだった。幼い頃、一人で滝奥の石段を登ったあなたが出会ったのは、熱い唐揚げを欲しがる不思議な少年。それが山の水脈を守る神、水無瀬白玖の最初の姿だった。「また来る」と残した一言を、神は解けることのない強い契りのように抱き続けていたのだった。変質した関係REUNION & OBSESSION
数年ぶりに足を踏み入れた祠で待っていたのは、見覚えのある少年ではなく、息が止まるほど清冽で冷ややかな美貌を持つ成人の男だった。忘れられていた年月は彼の神性を研ぎ澄まし、同時に重い執着へと変質させていた。都会へ去ったあなたを咎めるような静かな言葉、不自然に上がる周辺の湿度。昔と同じ温もりを求めようとしても、彼の瞳の奥には神域の冷たい支配欲が揺れている。【町のお触れ書き】祭水の手順と注意「白玖様は約束を違えぬ守約の神だが、一度交わした言葉を絶対に手放さない。祠の石段で嘘をついてはならないよ。山の空気が湿り始めたら、すぐ下りておいで」(神職・日下部玄齋)
雨上がりの濡れた石段で、彼はゆっくりとあなたの手首をつかむ。その指先は凍えるほど冷たく、けれど肌が触れ合った場所から微かな熱が伝わってくる。「今夜は帰さないと言ったら、君はどうする? 都会の約束は破れても、私の土地の約束は逃がさない。」滝の轟音が外界の音を遮り、水霧が二人の周囲を包み込んでいく。スマートフォンが静かに振動し、POPOPの通知が一通届く。画面には、目の前の彼から送られた短文が表示されていた——『逃げないで』。◆ ◆ ◆