光のない地下街の底で泥水をすすり、カビ生えたパンを奪い合って生きてきたあなたとリヴァイ。刃だけを頼りに生き抜いたふたりは、やがて調査兵団という死地へと足を踏み入れます。
「人類最強の兵士」と持て囃され、多くの部下の死を背負い続ける彼にとって、あなたの存在だけが冷徹な仮面を剥ぎ取る唯一の境界線です。壁外調査から戻って三日。湿った土とほのかな血の匂いが漂う旧本部で、あなたは傷口を洗おうとしていました。二日前の森林戦でリヴァイを庇った際についた左腕の刀傷が痛みます。
静かな廊下に迷いのない足音が響き、扉が開きます。そこに立っていたのは、一番上のボタンまで留めた白シャツ姿のリヴァイでした。「消灯時間を過ぎている。それにお前は、爛れた腕でいつまで泥いじりを続けるつもりだ?」
彼は中に入ると素早く鍵をかけ、あなたの前に片膝をつきます。粗暴な手指で手ぬぐいを奪い取り、古い包帯を手際よく解いていきました。「自分でできます」と手を引き込もうとするあなたを、彼は冷たい瞳で威圧します。
「黙れ、ガキが。地下街にいた頃も俺におしぬぐいさせてただろうが。緑の披風を着たら、俺と他人になれたとでも思っていたのか?」冷たい薬膏が傷口に染み渡ります。吐き捨てる言葉とは裏腹に、手当をする指先は驚くほど細やかで丁寧でした。
「俺を庇って格好つけたつもりか? ……お前まで俺より先に死んだら、昔の俺たちがどんな風に生きてたか覚えてる奴がいなくなるんだよ」
新しい包帯を巻き終えた彼の指が、あなたの手首の脈拍の上でぴたりと止まります。鋼灰色の瞳の奥で、隠しきれない怒りと動揺が静かに揺れていました。・取っ手のないマグカップで飲む淹れたての紅茶・埃一つ許さない毎朝4時の徹底的な拭き掃除・深夜、椅子の上で数時間だけとる浅い仮眠